~小説の書き出し・・・その8:銀婚式第4章 6 ~
文章を書く際に、まず最初に悩むのは、書出しの言葉ではないだろうか。
読み手の心をつかむためにも書き出しは重要だと思う。
そこで、私がいままで読んだ文の中で、印象に残った文章の書き出しを紹介。
《銀婚式第4章 6》
センター試験が終わり、正解が公表された夜、息子に電話した。
「まあまあ、大丈夫だと思うよ」
いつもと変わらぬ、いささかそっけない口調で翔は答えた。それ以上根掘り葉掘り尋ねられても本人は答えようがないだろう、と考えそそくさと電話を切る。
・・・・・
3月下旬に最後の合格発表があった。
翔は九州にある国立大学の工学部に合格を果たした。
・・・・・
「頑張った甲斐があったな」
「うん、なんか、やればできるんだって気がしてきた」
結果がどうこうということ以上に、努力は実を結ぶという事実を息子が知ってくれたことがうれしい。
篠田節子著 「銀婚式 第4章 6 」
毎日新聞 2011,2,13(日)日曜くらぶ より