~上杉鷹山を称賛、藤原正彦氏が新著「国家と教養」で~
💛 国のリーダーは、外国の顔色をうかがうようでは論外ですが、国民の目線に立ってもいけません。国民には国をリードする能力がないからです。国民の心の底にある不安や不満を洞察したうえで、大局観により国家国民の十年後、三十年後、五十年後を見据えつつ、生命を捧げるつもりで国をリードしなければならないのです。
💛 堂々たる価値基準をもつこと。すなわち教養を蓄積することが国のリーダーには決定的に重要です。
💛 民主主義国家では、政治を司る人も、選ぶ立場の国民一人一人も、十分な教養をもつこと、成熟した国民になることが不可欠なのです。
💛💛 江戸中期、米沢藩主の上杉鷹山は、苦しい藩の財政を再建するため倹約令を発し、自ら江戸での生活費を千五百両から二百九両に減らし、一汁一菜を実行し、衣服は絹をやめ木綿のみとし、奥女中を五十名から九名に減らすことをしました。最後のことだけは、偉そうなことを言う私でもとてもできそうにありません。
倹約に加え、養蚕、製紙などの第二次産業を興し範の収入増大を図りました。天明の大飢饉では大凶作の東北で多くの餓死者が出ましたが、米沢藩では蔵を開いて備蓄米を貧しい農民に分け与えたため餓死者が一人も出ませんでした。ケネディ米大統領が「最も尊敬する政治家の一人」と語った人です。
💛💛 上杉鷹山のような哲人がトップにいたら、その人に政治を任すのが最善です。間違っても民主主義、すなわち多数決にしてはいけなせん。ただ残念なことに哲人の選び方が古今東西、どこの誰にも分らないのです。
💛💛 上杉鷹山のような人が日本にもいるはずですが、どこにいるかわからないのです。私は自分が適任と信じているので女房にそう言ったのですが、「家さえまかせられないあなたにどうして国を任せられるの」と一蹴されました。
藤原正彦著 「国家と教養」新潮新書より