~ネット時代にこそ「儀式」を!~
日本経済新聞 2019.7.1 7面 Opinion
米国版エディター・アット・ラージ
ジリアン・テット より
❖ 民俗学者のアーノルド・ファン・へネップが考案し、
人類学者のビクター・ターナーと心理学者のカール・ユングが練り上げた概念
「リミナリティ―(2つの位相の間の過渡的状態)」を考える。
語源は玄関や境界を意味するラテン語の「リーメン」で、社会や人は変革を遂げるたびに、儀式やシンボルを使ってそれを認識するという考え方を表している。
〈儀式の3要素〉
❖ 以前の生活の終わり
❖ 新生活の始まり
❖ 旧生活から新生活に移行するときの「過渡的」状態。
この過渡的状態では日常生活の規範は崩れる傾向がある。
💛リミナリティ―とは昆虫がさなぎから成虫になるように社会や文化が孵化することだ。
💛ネット時代に適応するには我々のアイデンティティ―や、社会生活における通過儀礼の意味をもっと考える必要がある。そうした心の支えにより、我々は共通のアイデンティティ―や精神的安定感をもてるようになるからだ。
💛我々が就職や結婚、引っ越し、誕生日などの大切な過渡的瞬間を記念しようとするように、国や社会も転換期を迎えたら、市民の安心感だけでなく社会の一体感をもたらすために、どのように「通過儀礼」を行えばいいか考えることが極めて重要になる。
移行の儀式の重要性は何も卒業生に限ったものでない。(6月27日付)
〈重要文化財・旧米沢高等工業学校本館〉
明治43年・1910年創立の米沢高等工業学校を引き継いだ山形大学工学部は、来年110周年を迎えます。