記憶は、忘却によって、少しずつ変化し、よりよく変化する
~記憶は、忘却によって、少しずつ変化し、よりよく変化する~
外山滋比古著 乱読のセレンディピティ 扶桑社発行より
💎 記憶はいつまでも元のままであるのではなく、忘却によって、少しずつ変化する。しかも、よりよく変化する。
忘却し切れなかったものが、再生される。この記憶もしばらくするとまた忘却のスクーリングを受けて変貌する。
これを繰り返しているうちに、もとの記憶が、大きく、あるいは少し変形する。その変化は美化であって、醜悪化されることは少ない。忘却は記憶を改善(?)する作用を持っているように思われる。
❖ 芥川龍之介の短編「秋山図」は名画の記憶がテーマである。煙客翁という人が若いとき名画・秋山図をみせられて感動。その後、もう一度、と願ったが拒否される。何十年もして、名画の持ち主が変わって煙客翁はようやく再見を果たす。ところが眼前の画は記憶の中の画とは比べものにならないほどみじめなものであって、ショックを受けるのである。
💎 これは記憶違いではない。記憶と忘却が作品を美化したのである。時間の経過が必然的にもとのものを忘却する。そしてそのつど、美化させる。やがて実物よりはるかに美しいものが記憶され、回想の中の姿になる。幻滅は、こういう記憶の変化、忘却による浄化によっておこる。それが記憶の新陳代謝だと考える。
💎【忘却とは、 忘れ去ることなり】
九州旅行で訪れた雲仙温泉・九州ホテルの傍に、地獄めぐりを散策していたら、石碑に出合う。
君の名は?と問うと、「君の名は」ですと答えてくれた。真知子岩でした。
<忘却とは、 忘れ去ることなり>
忘却とは、 忘れ去ることなり、
忘れ得ずして,忘却を誓う心の悲しさよ
菊田一夫
<君の名は、真知子岩 :雲仙温泉・地獄めぐり>
≪雲仙温泉・地獄めぐり≫
雲仙温泉・九州ホテルのすぐ傍の地獄めぐりの散策をする。
【地獄とは】
噴気や温泉の集まっている所を「地獄」と呼んでいる。
<地獄めぐり>