~時には自分の足音に耳を傾けよう~
◇「晩年、藤沢周平は自分の足跡を消しながら生きていたように思われる」そこに藤沢文学の真髄を見る事ができる。と昨日受講した「藤沢周平の山形」で、一般公募のエッセイ朗読で何方かが話されていた。「自分の足跡を消す」「吹雪の中足跡が消されるようではなく」「消しゴムを使って、自分の意思で消し去ろうとした」のか。
《「藤沢周平の山形」第4章米沢の会場 風景》
《会場から庭を望む》
◇毎日新聞の日曜クラブを読むのが楽しみだ。直木賞作家 石田衣良氏の「チッチと子」を毎週心待ちで読んでいる。ここ数回は直木賞の選考会を待つ主人公青田と息子と取り巻く人の描写である。以前から時折読んでいたが今朝(21日)は、須藤靖貴氏の「池波正太郎を歩く」をじっくりと読む。昨日、直木賞作家・高橋義夫氏の「時代小説の楽しみ」の講演を聴いたからかもしれない。
◇テーマは、「おれの足音③」である。今日のタイトルは『生は一瞬の積み重ね』。池波正太郎著『おれの足音』は吉良邸討ち入りのリーダーとして歴史に名を刻んだ大石内蔵助。その足跡と、彼を追い詰めた政治状況を描いた名作。
◇須藤靖貴氏は文春文庫下巻に<「さいわいひとという生きものは、日常の暮らしにおいて、すべてを忘れる術を心得ている。・・・・以下私(山崎)の好きなフレーズがあるが省略」>この文章が、ふやけた胸に突き刺さる。
一歩一歩の積み重ねを生きているのに、自分の足音に耳を傾けることは少ない。二度と通らぬかも知れない風景を、目的地に着くことのみを思って看過してきたのではないか。おれの足音。なんとも味わいの深いタイトルだ。・・・・・。と記述している。須藤靖貴氏の名文だと思う。